だいどこ道具ツチキリ 土切敬子さん
台所道具選びのプロに聞く
-理想のお店づくりのための、モノ選び-

第1話で台所道具選びの基準について話してくださった土切さん。今回は、お店づくりへのスタンスをお話しくださいました。土切さんの、モノ選びにかける情熱が伺えます。

どんなお店づくりを目指していますか?

土切さん:「昔ながらの談笑しながら接客できるお店。店内には、お客様と世間話をしながら接客できるよう、腰掛け用の段差を設けています。話の中で、こんな商品あったらいいな、という要望をいただくこともあります。それが商品を探すきっかけになることも。」

お客様があらたまらず、ちょっとお茶を出しても気を使わなくていい距離感。取材の日も土切さんがお客様とこの段差で会話をしているシーンは、とても心温まる光景でした。そんな何気ない会話だからこそ、お客様も本音が言いやすいのかもしれません。

元々おうちの一部を改築した、土間に広がるようなつくりの店内は、どこかアットホームな雰囲気。真横には、土切さん宅のダイニング・キッチンがつながっています。

他のお店でみかけないものもありますね。

土切さん:「このまな板は、自分で作っちゃいました。木のまな板は素敵だけど、歳を重ねると重いしカビも生える。薄いシートのようなまな板が好きな人もいるけど、それだと刃こぼれを起こす。そこでいきついたのが、このラバーまな板。日本で初めて木芯入り軽量ゴムまな板を生産したメーカーが使っている、表面のラバーのみを大きな板状で取り寄せて、ちょうどいいサイズにカットして販売しています。手間なこと、してるよね・・・笑」

ないものは、作る。売れるものを売るのではなく、良いと思ったものを売る。日々の生活に等身大で、着飾らない、土切さんの商品選びのスタンスは、とても実直で、感動さえ覚えます。

土切さんがセレクトする、こんなモノ

“ポタポタ注げる醤油差し”
本来は、ヨーロッパで紅茶にリキュールを数滴入れるために使われているもの。「ポタポタ注げる醤油差しがほしい」という声をもらい、この商品がTVで紹介されていたのを思い出してメーカーに問い合わせたそう。

“卵が似合うステンレスかご”
メーカー側も取扱っていることを忘れる程の商品に目をつけて仕入れたもの。卵などを入れると可愛いとのこと。「これを仕入れるのツチキリさんくらいですよ」とメーカーの方に言われたのだとか。

“陶器のおひつ”
残ったご飯をこの陶器のおひつに入れて、冷蔵すれば、翌日はそのまま電子レンジでチンするだけ。ふたが湿気を吸ってくれるので、美味しく保存できる。

お店の商品は、ご自身でも使ってみるのですか?

土切さん:「できるだけ、使ってみます。商品のいいところ、悪いところ両方を説明できるものを届けたいので。自分で使ってみて、いいと思うものを販売しています。お店にあるタイマーも、全部試しました。ちなみに手動でセットするアナログタイマーが一番のお気に入り。5秒しか鳴らないから聞き逃すと終わりなんだけど、そこも可愛くて…。」

実際に土切さんの使ってみた商品が並んでいるから、お店で紹介される商品の利便性や使い方にはとても説得力があり、自分も使ってみたい、買い替えてみたいと思わせてくれます。

テキスタイルデザイナー、パッケージデザイナーとして働いていたころから好きで集めていた台所道具。この知識を自分だけで持っているのはもったいないという想いも積り、始めたこのお店。お話を通じて、土切さんの一つ一つの道具に込める愛情が、ひしひしと伝わってきました。

こんなのあったら、を見逃さない力、本当に最適だと思うものをとことん探し出すエネルギー、とても勉強になりました。私たちの生活の中でも、参考にしたいですね。次回は、土切さんの普段の台所をのぞかせていただきます。是非、お楽しみに。(つづく)


土切 敬子 さん
テキスタイルの企画デザイン、食品関連のアートディレクターを経て、2017年5月、だいどこ道具ツチキリをOPEN。お店では独自の視点でセレクトした台所道具を紹介。最近は天然生活やku:nelなど様々な雑誌に取り上げられている。

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